母子生活支援施設…という名前が長くて、たいていの場合、間違われます。「母子福祉施設」、「母子自立支援施設」、「母子生活施設」、「母子支援施設」…。そのバリエーションに触れるたび私たち母子生活支援施設がどういう見られ方をしているのかということに気づかされるのです。

つまり、多くの人にとっては「母子家庭」を支えることは重要で、「支援」を必要としている母子家庭がいることも分かっていて、「自立」していけるような「支援」を受けられる場所が母子生活支援施設なのだろうと思ってくださるのだと思うのです。

このイメージはほぼ正解です。

 

ほぼ…?

実は完全なる正解とまでは言えないと私は思っています。

母子生活支援施設は児童福祉施設なのです。どうして親がいるのに児童福祉施設なの?と思われる方がいらっしゃるのはもちろんでしょう。しかし、親がいるからこそ児童福祉施設だと胸を張って言いたいのです。

子どもにとっての家族は第一次集団です。家族に属しているからこそ子どもとして多くの利益を受けることが約束されています。しかしながら、その家族の中に暴力や貧困があった場合、子どもは享受してしかるべき利益を失います。

母子生活支援施設は親から与えられるはずの利益が少なくなってしまった子どもに関わることによって、喪失した状態のまま大人にさせないことを保障する子どもの権利擁護の砦だと私は思っています。

そのためにひとり親家庭の母親と積極的に関わり、話し、笑い、怒り、泣くことのできる職員が、母親と共に子どもの育て方やこれからの生き方を考えるきわめて稀有な公の場であるとも思っています。

世の中は「家庭的養育」から「家庭養育」へとシフトすることが求められていますが、元々家庭養育を支えてきた母子生活支援施設(母子寮)は、今こそその力を世に解き放つ時だと考えています。親子関係再構築、産前産後支援、里親支援、地域支援…今求められている子どもとその家庭への支援施策すべてに母子生活支援施設は関わってきた歴史があるのです。

ベタニヤホームは2023年に創立100周年を迎えます。100年間母子家庭と共に歩んできた歴史に恥じぬよう、新しい建物(20206月竣工)を建て、チームケアを当たり前だと思う職員の養成に時間を掛けてきました。2021年度からは本格的な食支援パントリー事業(「アウトリーチパントリープロジェクト」)を通じてアフターケアの充実(2021年度前年度比297%増)や、支援が必要な母子家庭を自らが探し出す地域パントリーを実施しています。コロナ禍のために里親支援(里親レスパイト事業)はスタートを切れずにいますが、産前産後支援をその先に見た事業展開の計画を検討しております。

日頃から多大なるご寄贈、ご寄付、ご協力を賜りながら、不躾なお願いではありますが、どうか引き続き私どもベタニヤホームにご関心をお向けいただき、ご指導いただきたくお願い申し上げる次第です。

ちなみに、私どもベタニヤホームは「ア」ではなく「ヤ」であることもぜひお気に留めていただければ幸いです。この訂正をさせていただく時の気まずさたるや、例えようもないものでして…。

 

 

母子生活支援施設ベタニヤホーム

 施設長 伊丹 桂